COPD、喘息、ACO:
「閉塞性肺疾患」という捉え方

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)と喘息は、気道の炎症に基づく気道閉塞が共通の特徴であり、臨床的な症状や病態は類似している部分も多く、鑑別が難しいことも少なくありません1)。また、治療への反応性も、どちらかの診断名に基づく標準的な治療法だけでは良好な結果が得にくい場合もあります。さらに、両者の特徴を併せ持つACO(Asthma and COPD Overlap:喘息とCOPDのオーバーラップ)という疾患概念の存在は、これらの疾患の共通性と、治療における複雑性を表しています。

1961年にオランダのOrieら2)によって提唱され、その後「Dutch hypothesis(オランダ学説)」と呼ばれる疾患仮説があります。大本の仮説では、気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫の3疾患は表現型が異なっているものの、1つの疾患群として捉え、「CNSLD(Chronic Nonspecific Lung Disease)」という疾患概念を提唱しています2)

そして、このオランダ学説を引き継ぐ形で、臨床症状や病態が類似しているCOPDと喘息の2疾患を、表現型が異なる1つの疾患群として捉えられるという考え方が提唱されました3,4)。一方でこの考え方に反対する意見もあります5)

しかし、実臨床では、個々の患者の診断や最適な治療法の検討に際して、喘息とCOPDのどちらか一方を考慮するだけでは不十分であることは明らかです3,4,6-8)。そのため、COPDと喘息、ACOが「閉塞性換気障害」という共通する呼吸機能障害を有することから、「閉塞性肺疾患」として同様の疾患と捉え、その特性、すなわち「Treatable traits」を見極めることの重要性は高いと考えられています6-8)

  • 一般社団法人日本呼吸器学会喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き2018作成委員会編, 喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き 2018, 14-15, 一般社団法人日本呼吸器学会, メディカルレビュー社, 2017.
  • Orie NG, et al. The host factor in bronchitis. Orie NG, Sluiter HJ, eds. Bronchitis, Royal Van Gorcum, Assen, the Netherlands, 1961, 43-59.
  • Postma DS, et al. Chest. 2004; 126(2 Suppl): 96S-104S. PMID: 15302769
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  • Barnes PJ. Am J Respir Crit Care Med. 2006; 174(3): 240-243. PMID: 16864717
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  • Agusti A, et al. Thorax. 2013; 68(7): 687-690. PMID: 23117977
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NP-JP-FVU-WCNT-1900082023年12月