「Treatable traits」として検討されている「Traits(形質・特徴)」

閉塞性肺疾患(COPD※1、喘息、ACO※2)の臨床症状は非常に複雑で、患者ごとに異なる形質・特徴を併せ持つ不均一な疾患です1,2)。こうした形質・特徴は、治療への反応性や予後にも影響するため、それらを予測する要素にもなり得ると考えられています。

  • ※1COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease、慢性閉塞性肺疾患
  • ※2ACO:Asthma and COPD Overlap、喘息とCOPDのオーバーラップ

中でも、COPDは患者によって病態が非常に多様であることが知られており、提供する医療の最適化を目指して「Treatable traits」の究明が進められている疾患の1つです。

COPDの臨床的評価基準と管理基準は、これまで、気流制限の重症度に基づいて行われており、現在もそれは続いています。その重要性に疑いの余地はありませんが、それだけで評価しきれないCOPDの要素は他にも多数あると考えられ、最近の世界的イニシアチブあるいは診療ガイドラインなどでは他の指標も用いた総合評価が提唱されてきています。

そうした考え方の1つに、Agustiらの提唱する“重症度(Severity)”、“活動性(Activity)”、“日常生活への影響(Impact)”の3つの指標を評価するための要素(パラメーター群)をまとめた「COPDコントロールパネル」案があります(図11)。評価要素を的確にモニタリングすることで、その時点での患者の状態を指標化でき、求められる治療介入の検討をサポートするものです。

図1“重症度(Severity)”、“活動性(Activity)”、“日常生活への影響(Impact)”の3つの指標を評価する「COPDコントロールパネル」案1)

  • Agusti A, et al. Thorax. 2013; 68(7): 687-690.

また、個々の患者の「Traits(形質・特徴)」に含まれる「Treatable traits」の要素を抽出し、その特性を総合的に評価することで、治療薬選択の最適化をサポートする試みもあります(図2、図32,3)

こうした試みは他にもあり、いずれも、複雑で個別の対応が必要なCOPDという疾患に対して、治療方法の選択を最適化するための要素、すなわち「Treatable traits」を究明しようとするものです。これらの研究で示された要素や指標は、現在も検証が行われている段階であり、実臨床で日常的に使用するためには、さらなる研究の進化が求められています。

図2さまざまな階層に分類される「Traits」2)

  • Agusti A, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2011; 184(5): 507-513.より改変
  • Reprinted with permission of the American Thoracic Society. Copyright © 2019 American Thoracic Society.
  • Agusti A, et al. 2011, Current controversies and future perspectives in chronic obstructive pulmonary disease, Am J Respir Crit Care Med, 184(5), 507-513.
  • The American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine is an official journal of the American Thoracic Society.

図3個々の患者によって異なるさまざまな「Traits」の影響3)

  • Agusti A. Thorax. 2014; 69(9): 857-864. より一部引用
  • Agusti A, et al. Thorax. 2013; 68(7): 687-690.  PMID: 23117977
  • Agusti A, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2011; 184(5): 507-513. PMID: 21680951
  • Agusti A. Thorax. 2014; 69(9): 857-864.  PMID: 24781218

動画による解説は、こちらをご確認ください。

NP-JP-FVU-WCNT-1900082023年12月