病態や治療法に多くの共通点を持ちながら、患者ごとにその形質・特徴が異なる閉塞性肺疾患について、代表的な疾患であるCOPD※1、喘息、ACO※2にまつわるデータを集めました。数字と図表で紐解きながら、疾患に関する理解を深めていただければ幸いです。
- ※1COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease、慢性閉塞性肺疾患
- ※2ACO:Asthma and COPD Overlap、喘息とCOPDのオーバーラップ
潜在患者が多いCOPD
- Fukuchi Y, et al. Respirology. 2004; 9(4): 458-465.
- 厚生労働省, 平成29年(2017)患者調査の概況, 5 主な傷病の総患者数.
より作図
日本国内におけるCOPD患者は約530万人いると推測されています1)。対して、日本においてCOPDの治療を受けているのは約22万人との報告があり2)、COPDと診断されていない人や、治療を受けていない人が相当数存在することが考えられます。
- Fukuchi Y, et al. Respirology. 2004; 9(4): 458-465. PMID: 15612956
- 厚生労働省, 平成29年(2017)患者調査の概況, 5 主な傷病の総患者数.
閉塞性肺疾患にかかる医療費
- 対象とした医療費:医科診療や歯科診療にかかる診療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費等を含む、当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用。
- 方法:医療保険制度等による給付、後期高齢者医療制度や公費負担医療制度による給付、これに伴う患者の一部負担等によって支払われた医療費を合算し国民医療費を算出、さらに、傷病分類別医科診療医療費を各種調査による割合を用いて推計した。
- 厚生労働省, 平成28年度 国民医療費の概況. より作図
平成28年度に、医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計した国民医療費についての調査1)において、医療費の総計は301,853億円、呼吸器系の疾患にかかった医療費は22,591億円(構成割合7.5%、傷病分類中第5位)であったことが報告されています。呼吸器系の疾患の中でも、COPDには1,467億円、喘息には3,383億円、65歳以上に限定した場合にはそれぞれ1,319億円、1,028億円の医療費がかかっていることが分かっています。
ACOの有病率
- Kurashima K, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 479-487.
- Kitaguchi Y, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 991-997.
- Yamauchi Y, et al. Respirology. 2015; 20(6): 940-946.
- Suzuki M, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2016; 194(11): 1358-1365.
- Suzuki T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 947-954.
- Kitaguchi Y, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2012; 7: 283-289.
- Inoue H, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017; 12: 1803-1810.
- Kobayashi S, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 2117-2123.
- Harada T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 595-602.
- Gibson PG, et al. Thorax. 2015; 70(7): 683-691.
- Wurst KE, et al. Respir Med. 2016; 110: 1-11.
ACOの有病率についてはさまざまな調査がなされており、図中の数値がそれぞれ報告されています1-11)。しかしながらACOの疾患定義が定まっていないことから、一定の見解を得ることが難しい状況にあります。そのため、ACOの疾患定義や有病率を明らかにするためのさらなる検討が求められています。
- Kurashima K, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 479-487. PMID: 27019598
- Kitaguchi Y, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 991-997. PMID: 27274220
- Yamauchi Y, et al. Respirology. 2015; 20(6): 940-946. PMID: 25998444
- Suzuki M, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2016; 194(11): 1358-1365. PMID: 27224255
- Suzuki T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 947-954. PMID: 26028967
- Kitaguchi Y, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2012; 7: 283-289. PMID: 22589579
- Inoue H, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017; 12: 1803-1810. PMID: 28694693
- Kobayashi S, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2016; 11: 2117-2123. PMID: 27660429
- Harada T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 595-602. PMID: 25834418
- Gibson PG, et al. Thorax. 2015; 70(7): 683-691. PMID: 25948695
- Wurst KE, et al. Respir Med. 2016; 110: 1-11. PMID: 26525374
ACOの疫学やその他の基礎的な情報は下記ページも併せてご参照ください。
ACOの特徴
ACOの身体活動および健康状態の特徴についての研究(海外データ)
- 対象:COPD患者(318例)およびACO患者(67例)
- 方法:スペインにおける多施設共同、集団ベースの横断的研究。呼吸困難はmMRCグレード、その他の呼吸状態やQOLについては欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)の質問紙、EQ-5D等の質問紙、呼吸機能検査等で評価し、ACOの特徴について検討した。
- 本試験におけるACOの定義:気管支拡張薬使用後のFEV1/FVCが0.70未満であることがスパイロメトリーの結果によって確認された患者をCOPDとし、そのうち喘息の既往のある患者をACOとした。
- 統計解析:χ2 testまたはStudent’s t test
- ※1臨床症状を認める頻度が高い(呼吸困難):mMRCを用いた評価により呼吸困難を認めた患者の割合
- ※2増悪を起こしやすい:過去1年間に増悪を認めた患者の割合(増悪の定義は論文中に記載なし)
- Miravitlles M, et al. Respir Med. 2013 ;107(7):1053-1060. より改変
COPD患者318例およびACO患者67例を対象とし、呼吸機能等の検査データおよび患者に対する質問紙調査より各疾患で現れる症状や増悪の頻度について検討した研究では、ACOはCOPDと比較し、呼吸困難の症状が現れる頻度および増悪の頻度が高いことが示されています(共にp<0.001, χ2 testまたはStudent’s t test)。
- Miravitlles M, et al. Respir Med. 2013 ;107(7):1053-1060. PMID: 23597591
その他のACOの特徴や、基礎的な情報は下記ページも併せてご参照ください。