閉塞性肺疾患における
「Traits(形質・特徴)」
― フェノタイプ(Phenotype)、エンドタイプ(Endotype)という概念 ―

閉塞性肺疾患(COPD※1、喘息、ACO※2)には、共通する症状は多いものの、患者によって臨床症状は多様で、分子生物学的にも複数の病態から構成される症候群と考えることができます。その中でも気管支喘息は、近年、「フェノタイプ(Phenotype)」や「エンドタイプ(Endotype)」という概念に基づいた分類が試みられ、その分類に沿って最適な治療法が検討されるようになってきました。

  • ※1COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease、慢性閉塞性肺疾患
  • ※2ACO:Asthma and COPD Overlap、喘息とCOPDのオーバーラップ

「フェノタイプ(Phenotype)」とは、主に臨床像の違いから分類される病型のことです。例えば気管支喘息では、これまで、発症年齢(小児喘息と成人喘息)、特異的IgEの有無(アトピー型と非アトピー型)、季節性(通年性喘息と季節性喘息)、重症度(重症喘息と非重症喘息)などの単一パラメーターに基づくサブタイプ分類が行われてきましたが、これもフェノタイプに基づく病型分類の1つと捉えられます。近年では、医師の主観的判断によるバイアスを避けるため、臨床症状、生理的・生化学的・形態学的測定値などを複合的に評価したフェノタイプが提唱されています1-3)

一方で、「エンドタイプ(Endotype)」とは、フェノタイプとは異なり、分子生物学的な病態やその原因・機序に基づいて分類した疾患病型のことです。発症・増悪の機序や治療に対する反応性などを分子病態によって分類しようとする試みです。

フェノタイプとエンドタイプは必ずしも1対1に対応するものではなく、1つのフェノタイプが複数のエンドタイプから構成されることもあります。エンドタイプが明らかになることで、患者の病態に合わせた早期介入や治療方法の選択が容易になることが期待されます。

閉塞性肺疾患は、患者ごとに既存の治療薬に対する反応性が異なるため、フェノタイプやエンドタイプに基づく患者の特徴の見極めは、提供する治療の最適化や、複雑な病態の解明につながる概念として注目が集まっています。

  • Haldar P, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008; 178(3): 218-224. PMID: 18480428
  • Moore WC, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2010; 181(4): 315-323. PMID: 19892860
  • Just J, et al. J Pediatr. 2014; 164(4): 815-820. PMID: 24412137

動画による解説は、こちらをご確認ください。

NP-JP-FVU-WCNT-1900082024年9月